ETFにかかる税金

平成21年度(2009年度)版について記載。
平成22年度は、上場株式等の配当や株式投資信託の収益の分配金の受け入れ先として特定口座の源泉徴収口座を
指定することができるようになりました。これによって、源泉徴収口座内で「上場株式等にかかる譲渡損失との損益通算」
が自動的に適用されるようになります。


ページ内目次:
■ ETFとは ■ ETFから発生する損益 ■ 収益の分配金にかかる税金
■ 特定口座の利用 ■ ETFの売買にかかる税金 ■ 上場株式等の取得費の特例
■ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 ■ 確定申告について

■ ETF(上場投資信託)とは

日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった株価指数などに連動し、運用成果を目指す投資信託であり、
かつ上場している投資信託です。
上場しているので、現物株やJ-REITと同じような取引となり、ETFを対象とした信用取引も可能です。

ETFは、税法上、上場株式等と同じ扱いを受けます。 よって、以下の説明は多くが「上場株式等にかかる税金」と同じです。
とりあえず簡単なまとめは以下のようになります。 
注意:現在は平成21年度での税制を元に説明しています。


■ ETFから発生する損益

ETFの取引では、収益の分配金(=株の分配金と同じ)と売却損益、が発生します。
収益の分配金、売却損益、ともに課税対象となります。



■ 収益の分配金にかかる税金


◆ 税法上の取り扱い
ETFは上場株式等になるため、収益の分配金については、上場株式等の配当と同じ取り扱いとなります。
ETFは投資信託ですが、通常の株式投資信託にある特別分配金というものはありません。
また、ETFの収益の分配金は、配当控除の対象となっています。

ETFの収益の分配金は、配当所得に分類されます。
ETFの収益の分配金外に配当所得となるのは、株式の配当、不動産投資信託、株式投資信託の収益の分配(特別分配は非課税)などがあります。

上場株式等の配当の詳細については、配当にかかる税金のページで説明をしています。
また、配当控除については、「配当控除」のページで説明をしています。
ここでは、その中で重要なものを記載しています。


◆ 配当の区分
同じ配当所得に分類されてはいますが、配当は、「上場株式等」と「上場株式等以外」の2つに区分されます。
この2つの区分によって、配当所得の税率、申告方法の適用が異なってきますので注意をしてください。
ETFは、上場株式等に分類されます。


◆ 配当の源泉徴収
配当は、その受け取り時に、すでに税金が源泉徴収されています。
その源泉徴収される金額は、
となっています。
この税率は、あくまで源泉徴収時の税率であるため、確定申告で総合課税を選択した場合、税率が高くなることがあります。
また、上場株式等以外は、所得税のみの徴収なので確定申告をして住民税を納付する必要があります。


◆ 配当所得の計算
ETFの収益の分配金は、前述の通り、その分配金を受け取る前に税金分が源泉徴収され、残りが支払われます。
配当については申告不要制度が設けられていますが、もし確定申告をする場合は、配当所得を計算する必要があります。

配当所得の計算方法は、以下のようになります。
確定申告では、源泉徴収された所得税については、所得税の計算の最後あたりで清算されます。


◆ 配当所得の確定申告と税率
注意:現在は平成21年度での税制を元に説明しています。
基本的に、配当所得は、源泉徴収された上で、再度確定申告することになっています。
しかし、源泉徴収されてそれで終わりという特例も用意されていて、納税方法としては以下の3つのパターンに分かれます。

@ 確定申告をする
上場株式等(ETF含む)については、毎回、配当を受け取るたびに確定申告するのか、確定申告しないのかを決めることができます。
また、確定申告を選択した場合は、さらに総合課税か申告分離課税のどちらかを選択します。
総合課税か申告分離課税の選択については、配当ごとではなく、その年においてどちらか一方を選択して申告することになります。

   (1) 総合課税とする。(原則)
   上場株式等(ETF含む)、上場株式等以外ともに、原則は総合課税扱いです。

   総合課税の場合、
   他の所得(不動産、事業、山林、譲渡)に損失がある場合は損益通算ができます。
   それ以外の所得の損失との損益通算はできません。
   配当所得が損失であった場合も、他の所得との損益通算はできません。
   所得税の税率は、超過累進税率(5%〜40%)、住民税は10%です。
   配当控除を受けることができます。(注意!必ずしも対象になるわけではありません。)

   (2) 申告分離課税とする。(確定申告時に選択)
   上場株式等(ETF含む)については、総合課税ではなく申告分離課税を選択することができます。

   申告分離課税の場合、
   税率は、平成23年12月31日までは10%(所得税7%+住民税3%)です。
   他の所得との損益通算はできません。
   ただし、上場株式等の譲渡損失との損益通算ができます。
   配当控除は受けられません。

A 確定申告しない(申告不要制度)
上場株式等(ETF含む)については、その配当等の金額によらず、配当を受け取るたびに確定申告しないことを選択することができます。

確定申告しない場合、
他の所得との損益通算はできません。
上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません。
配当控除は受けられません。

ただし、平成22年1月から、特別口座の源泉徴収口座で「配当受け入れあり」を選択した場合、
収益の分配金と上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能となりました。


◆ 上場株式等の譲渡損失との損益通算
上場株式等(ETF含む)の配当について申告分離課税を選択した場合、「上場株式等の譲渡損失との損益通算」の
特例を受けることができます。

上場株式等の譲渡損失との損益通算とは、
上場株式等の売却等による損失(=上場株式等の譲渡損失)がある場合、
確定申告を条件に、
申告分離課税を選択した配当所得の金額から控除することができる。
という特例です。

詳細は、このページ内の「ETFの売買にかかる税金」の中で説明しています。


◆上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
上場株式等(ETF含む)について、申告分離課税を選択した場合に受けることができる特例です。
(正確には上場株式等の売却損に対する特例ですが、関係があるので・・・)

「上場株式等の譲渡損失」について、申告分離課税を選択した配当所得と「上場株式等の譲渡損失との損益通算」を
行ったのにもかかわらず、その損失が残っている場合、
確定申告を条件に、
翌年以降3年間にわたって、その損失を繰り越すことができます。

繰り越された損失は、
(1) その年の非上場株式等の譲渡等の金額
(2) その年の上場株式等の譲渡等の金額
(3) その年の申告分離課税を選択した配当所得の金額
の順番で控除することができます。

詳細は、このページ内の「ETFの売買にかかる税金」の中で説明しています。


◆ 配当控除
上場株式等(ETF含む)について、総合課税を選択した場合に受けることができる税額控除です。

配当控除については、上場株式等や上場株式等以外という区分で適用判断はしていません。
配当控除は、国内に本店をおく法人の株式等や株式投資信託の収益の分配金が対象となっているため、
例えば、上場株式等に該当している外国法人の株式等にかかる配当や、国外ETFなどは、配当控除の対象外となっています。
また、法人税が課税されていないJ-REITの収益の分配金も対象外です。

国内株式投資信託については、株式等の配当とは配当控除の率が異なります。
国内株式投資信託の収益の分配金について配当控除の適用を受ける場合は、必ず配当控除のページを見てください。


このページでは、国内に本店を置く法人の株式等(上場しているかどうかは関係ない)と、国内ETFの収益の分配金以外に
総合課税扱いの配当所得はない場合の配当控除の計算方法について説明をしますが、
こちらについてもう少し知りたい方は、配当にかかる税金のページをご覧ください。



■ 特定口座の利用
注意:現在は平成21年度における特定口座のことを記載しています。


◆ 特定口座とは
証券会社や銀行などに特定口座を開設した場合、その特定口座を通じて行った取引について、証券会社等が顧客に代わって
計算してくれるものです。
また、源泉徴収口座を選択することにより、顧客に代わって証券会社等が税金(所得税、住民税)を計算して代行納付もしてくれます。
特定口座で取り扱っているものとしては、現物株式や投資信託、信用取引などがあります。
(証券会社によって細かいところは違うみたいです。)
ETFについても特定口座で取り扱っている商品となっています。

注意したいこととして、対象は、特定口座で取り扱っている商品の売買に対する損益であることです。
配当や収益の分配金については、特定口座を受け入れ先として指定できませんので、関係がありません。

※ 平成22年からは、配当や収益の分配金の受取方法のひとつとして、特定口座の源泉徴収口座も可能となります。
特定口座の源泉徴収口座を受け入れ先とした場合、
・上場株式等の売却損と配当や収益の分配金の損益計算を行うことができるようになります。
・実際に口座内で損益通算されるのは年末で、そのときに場合によっては源泉徴収された税金が還付されます。
・他の証券会社の特定口座での上場株式等の譲渡損失との損益通算を行うためには、確定申告が必要です。

◆ 特定口座の種類
特定口座には、以下の2つの口座があります。
毎年、最初に取引を行う時までにどちらの口座にするか選択をすることができます。ただし、年の途中での変更はできません。
また、証券会社等ごとに、特定口座の種類を決定することができます。

簡易申告口座 ・・・・  証券会社が顧客に代わって、特定口座を通じて売却した上場株式等の譲渡所得等の金額を計算します。
その結果が記載された「特定口座年間取引報告書」が送られてきます。
顧客は、それをもとに確定申告を行います。

源泉徴収口座 ・・・・  証券会社等が顧客に代わって、特定口座を通じて売却した上場株式等の譲渡所得等の金額を計算します。
その結果が記載された「特定口座年間取引報告書」が送られてきます。
証券会社等は、投資家への支払いの前に、あらかじめ取引毎に税金分を計算して源泉徴収(または還付)します。
証券会社は、年1回、顧客に代わって税金(所得税、住民税)を納付します。
顧客は、「特定口座年間取引報告書」をもとに確定申告を行うこともできます。
すでに代行納付されているので確定申告をしないこともできます。
取得費の特例や上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を適用したい場合は、
必ず確定申告をしなければなりません。



■ ETFの売買にかかる税金


◆ 税法上の取り扱い
ETFは、上場株式等として扱われます。
上場株式等の売買については、「株式等の譲渡所得等」という所得区分になります。

「株式等の譲渡所得等」の所得に該当する損益は、他の所得に該当する損益と損益通算はできません。


◆ 課税方式と税率
「株式等の譲渡所得等」は、申告分離課税が適用されます。
申告分離課税とは、確定申告時に他の所得と分類して計算し、他の所得とは異なる税率を適用することです。

「株式等の譲渡所得等」の中でも、上場株式かどうかなどにより、適用される税率が異なります。
上場株式等(ETFも含む)の譲渡に対して、税率は、現在は特例として、10%(所得税7%+住民税3%)となっています。
平成24年からは、20%(所得税15%+住民税5%)に戻る予定です。

上場株式等以外の譲渡については、このホームページでは取り扱ってませんが、税率は20%(所得税15%+住民税5%)となっています。
また、上場株式等(ETF含む)については、
  ・上場株式等の取得費の特例
  ・上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
  ・上場株式等に係る譲渡損失の損益通算
の特例を受けることができます。


◆ 「株式等の譲渡所得等」の金額の計算方法
株式等の譲渡所得等の金額の計算方法は、以下のようになります。
同じ所得でありながら、上場分と未公開分と2つに分けて計算しなければなりません。
確定申告書では、同じ所得区分でありながら、上場分(上場株式等で金融商品取引業者等へ売委託したもの)と
未公開分(上場分以外)に分けて計算するようになっています。(適用する税率が異なるため)

ETFの売買による損益は、「上場分」として計算します。
また、ETFの収益の分配金について申告分離課税を選択した場合、C、Dの適用を受けることができます。


◆ 「株式等の譲渡所得等」の金額の計算例



■ 上場株式等の取得費の特例

ETFについても取得費の特例があります。
銘柄コードでいうと、1305、1306、1307、1329、1330など・・

平成13年9月30日以前に取得した株式等で、(取得期間の制限)
平成13年10月1日時点で上場株式等のうち対象のものに該当し、(対象範囲の制限)
平成14年12月31日まで保有し、(保有期間の設置)
平成15年1月1日から平成22年12月31日までに売却(売却期間の制限)
した場合には、申告をすることによって、(要申告)
平成13年10月1日の時価(終値)の80%をその株式の取得費とすることができます。

つまり、実際の取得費と上記のみなし取得費の有利なほうを取得費として損益計算します。
また、実際の取得費が不明な場合は、H13/10/1の時価の80%を取得費として損益計算します。

特定口座を利用しての売却の場合は、後で確定申告を選択しても適用できません。
取得費の特例を受けるためには、一般口座へ移して売却する必要があります。

参考HP :国税庁
◆ 平成13年10月1日の時価(終値)
◆ 取得費の特例の対象となる、上場株式等の範囲




■ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
注意:現在は平成21年度での税制を元に説明しています。

ETFは上場株式等に該当しますので、確定申告を選択した場合、適用を受けることができます。

@ 申告分離課税を選択した配当所得との損益通算が可能
  平成21年1月1日より、上場株式等の譲渡所得等の金額が、損失であった場合、
  確定申告を条件に、
  申告分離課税を選択した配当所得と損益通算をすることができるようになりました。

  これによって、上場株式等(ETF含む)の配当と売却損との間で損益通算ができるようになりました。

A 上場株式等にかかる譲渡損失の繰越控除
  @の適用後、それでも上場株式等の譲渡所得等の金額に損失がある場合、
  確定申告を条件に、
  翌年以降3年間にわたって繰り越し控除を行うことができます。

  特定口座を通じて売却した上場株式等についても、適用されます。
  繰越控除を適用する期間中は、取引がなくても確定申告をする必要があります。

◆ 前年からの繰越控除がある場合
(1) 最初に、上場株式等の譲渡所得等の金額が損失の場合、申告分離課税を選択した配当所得との損益通算をします。

(2) 前年から繰り越した損失額を損益通算します。

  前年から繰越された損失については、
  未公開分の利益 → 上場分の利益 → 申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の順番で控除していきます。

  また、繰り越された損失のうち、最初に差し引いていくのは、一番古い年の損失からです。
  (たとえば、平成21年度の所得税計算では、平成18年度の損失 → 平成19年度の損失 → 平成20年度の損失
  の順番で差し引いていきます。)

  それでも前年から繰り越した損失に残りがある場合、2年以内の損失のものは翌年度に繰り越すことができます。
(たとえば、平成21年度の所得税計算では、
 平成19年度の損失と平成20年度の損失は平成22年度へ繰り越すことができますが、平成18年度分は繰り越すことはできません。)




■ 確定申告について


◆ 所得税の確定申告
ETFの収益の分配金のうち確定申告(総合課税または申告分離課税)を選択したものや、特定口座の源泉徴収口座以外で売買したものは、
基本的に、利益があった場合は確定申告は必要です。


ただし、以下のような例外などに該当する場合、所得税の確定申告は不要となります。
無職の人や主婦、自営業者などは、これには該当しません。 個々の状況に応じて確定申告が必要かどうかで変わってきます。

  @ 給与所得者について、給与・退職以外の所得が20万円以下であった場合
  毎月、給料やボーナスから所得税が源泉徴収され、年末調整を行った給与所得者(派遣社員、契約社員、パート、アルバイトふくむ)
  は、所得税の確定申告をする必要はありません。

  ただし、年末調整を行った給与所得者でも、確定申告をしなければならない条件の一つとして、
  「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」
  というのがあります。
  つまり、「1つの会社だけから給料をもらっている人で、給料・ボーナス、退職金以外に収入がある場合、
  それを所得として計算した結果、20万円を超えていた時は、年末調整をしていても確定申告しなければならない」
  ということです。
  逆に言えば、20万円以下ならば、確定申告はしなくても良いということです。

  「給与所得及び退職所得以外の所得」としては、
  株や投資信託の売買、信用取引、先物取引、FX、外貨預金などの金融商品から派生する収入だけでなく、
  満期生命保険の一時金やオークションでの売買、懸賞金、土地や建物の売却なども該当します。
  これらを、それぞれ該当する所得の中で所得金額を計算し、その合計額が20万円以下であれば、確定申告は不要となります。

  ということは、特定口座の源泉徴収口座を利用していなくても、税金を支払う必要がなく、実質非課税となります。

  ただし、確定申告不要になるためには、そのほかにも条件があります。
  たとえば、「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」は、上記に該当していても確定申告は必要になります。
  かならず、国税庁のHPなどで確認をしてください。

  参考HP :    国税庁 タックスアンサー (No.1900 サラリーマンで確定申告が必要な人)


  A 特定口座の源泉徴収口座を利用して、税金を納付する場合
  源泉徴収口座を利用することにより、証券会社が税金分を徴収し代行納付しているので、確定申告は必要ありません。
  ただし、@のように、20万以下の利益であっても税金は徴収されますので注意してください。
  確定申告しても戻りません。(もともと納付すべき税金なので)


◆ 住民税の確定申告
住民税については、@のような特例はありません。
利益があれば、確定申告が必要となります。

ただし、特定口座の源泉徴収口座を利用している場合は、所得税とともに住民税も代行納付されていますので
確定申告は不要になります。