国内公募株式投資信託にかかる税金

平成21年度(2009年度)の証券税制について記載
平成22年度は、上場株式等の配当や株式投資信託の収益の分配金の受け入れ先として特定口座の源泉徴収口座を
指定することができるようになりました。これによって、源泉徴収口座内で「上場株式等にかかる譲渡損失との損益通算」
が自動的に適用されるようになります。

ページ内目次:
■ 国内公募株式投資信託で発生する損益 ■ 投資信託の換金方法 ■ 個別元本の計算方法
■ 普通分配金と特別分配金の計算 ■ 国内公募株式投資信託の収益分配金にかかる税金
■ 特定口座の利用 ■ 国内公募株式投資信託の譲渡(売却、解約、償還)にかかる税金
■ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 ■ 確定申告について


■ 国内公募株式投資信託で発生する損益

国内公募株式投資信託で発生する損益としては、以下の4つに分類することができます。
税金の取り扱い方法で分類すれば、@収益の分配金なのか、 ABC譲渡による収入なのかの2つに区分されます。
また、収益の分配金のうち、特別分配金にあたる部分は非課税となっています。



■ 投資信託の換金方法

投資信託の換金方法は、以下の3つのパターンがあります。
平成21年度(2009年度)の証券税制からは、これらの換金方法のいずれであっても課税方法は同じとなり、
譲渡所得として取り扱われます。
(みなし譲渡損とか配当所得とか、そんな面倒なことは平成20年度で終わりました)



■ 個別元本の計算方法

個別元本とは加重平均で計算された、税法上の投資信託の一口あたりの購入金額のことです。
個別元本の計算では、投資信託購入時に支払った販売手数料などの取得時の諸経費は含まれません。
個別元本≠取得価額となります。


また、決算時に特別分配金がある場合、個別元本は減少します。
つまり、個別元本は、新たに追加購入していなくても金額が変化します。

収益分配金のうち、普通分配金(課税対象)と特別分配金(非課税)を区分するためには、
その人の個別元本を計算する必要があります。
ちなみに個別元本や普通分配金、特別分配金の計算は、証券会社等が行い、書類等で通知してくれます。


◆ 個別元本の計算例



■ 普通分配金と特別分配金の計算

特別分配金が発生するのは、株式投資信託だけです。
公社債投資信託やETF(上場投資信託)、J-REIT(上場不動産投資信託)では発生せず、
これらの収益の分配金はすべて普通分配金になります。

株式投資信託の収益分配金のうち、特別分配金がいくらになるのかは、個人ごとの個別元本によって異なります。

分からなくても、証券会社等が勝手に計算して通知してくれます。



■ 国内公募株式投資信託の収益分配金にかかる税金

◆ 税法上の取り扱い
国内公募株式投資信託は、上場株式等として扱われます。
国内公募株式投資信託にかかる収益の分配金のうち、普通分配金は課税対象ですが、特別分配金は非課税となっています。
また、国内公募株式投資信託は、配当控除の対象となっています。

国内公募株式投資信託にかかる普通分配金は、配当所得に分類されます。
そのほか配当所得となるのは、株式の配当、不動産投資信託、ETFなどがあります。

上場株式等の配当の詳細については、配当にかかる税金のページで説明をしています また、配当控除については、「配当控除」のページで説明をしています。
このページでは、その中で重要なものを記載しています。


◆ 配当の区分
同じ配当所得に分類されてはいますが、配当は、「上場株式等」と「上場株式等以外」の2つに区分されます。
この2つの区分によって、配当所得の税率、申告方法の適用が異なってきますので注意をしてください。
株式投資信託は、上場株式等に分類されます。


◆ 税金の源泉徴収
前述のとおり、収益の分配金のうち普通配当金は、上場株式等の配当と同じ取り扱いになりますので、
普通分配金にかかる税金については、その受け取り時に源泉徴収されています。
その源泉徴収される金額は、
となっています。

この税率は、あくまで源泉徴収時の税率であるため、確定申告で総合課税を選択した場合、税率が高くなることがあります。
また、上場株式等以外は、所得税のみの徴収なので確定申告をして住民税を納付する必要があります。


◆ 配当所得の計算
普通分配金は、前述の通り、その分配金を受け取る前に税金分が源泉徴収され、残りが支払われます。
配当については申告不要制度が設けられていますが、もし確定申告をする場合は、配当所得を計算する必要があります。

配当所得の計算方法は、以下のようになります。
確定申告では、源泉徴収された所得税については、所得税の計算の最後あたりで清算されます。


◆ 配当所得の確定申告と税率
注意:現在は平成21年度での税制を元に説明しています

株式投資信託の収益の分配金や上場株式等の配当については、前述のとおり源泉徴収されていますが、
基本的には改めて確定申告(総合課税)をして清算しなければなりません。
しかし、特例も設けられているため、その申告方法は以下の3つのパターンに分かれます。

@ 確定申告をする
上場株式等(株式投資信託含む)については、毎回、配当を受け取るたびに確定申告するのか、確定申告しないのかを
決めることができます。
また、確定申告を選択した場合は、さらに総合課税か申告分離課税のどちらかを選択します。
総合課税か申告分離課税の選択については、配当ごとではなく、その年においてどちらか一方を選択して申告することになります。

   (1) 総合課税とする。(原則)
   上場株式等(株式投資信託含む)、上場株式等以外ともに、原則は総合課税扱いです。

   総合課税の場合、
   他の所得(不動産、事業、山林、譲渡)に損失がある場合は損益通算ができます。
   それ以外の所得の損失との損益通算はできません。
   配当所得が損失であった場合も、他の所得との損益通算はできません。
   所得税の税率は、超過累進税率(5%〜40%)、住民税は10%です。
   配当控除を受けることができます。(注意!株式等の配当と違い、配当控除の率が異なります。)

   (2) 申告分離課税とする。(確定申告時に選択)
   上場株式等(株式投資信託含む)については、総合課税ではなく申告分離課税を選択することができます。

   申告分離課税の場合、
   税率は、平成23年12月31日までは10%(所得税7%+住民税3%)です。
   他の所得との損益通算はできません。
   ただし、上場株式等の譲渡損失との損益通算ができます。
   また、上場株式等の譲渡損失の繰越控除においても損益通算ができます。
   配当控除は受けられません。

A 確定申告しない(申告不要制度)
上場株式等(株式投資信託含む)については、その配当等の金額によらず、配当を受け取るたびに確定申告しないことを選択することができます。

確定申告しない場合、
他の所得との損益通算はできません。
上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません。
配当控除は受けられません。

ただし、平成22年1月から、特別口座の源泉徴収口座で「配当受け入れあり」を選択した場合、
収益の分配金(普通分配金の部分)と上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能となりました。



◆ 上場株式等の譲渡損失との損益通算
株式投資信託の収益の分配金について、申告分離課税を選択した場合に受けることができる特例です。

上場株式等の譲渡損失との損益通算とは、
上場株式等の売却等による損失(=上場株式等の譲渡損失)がある場合、
確定申告を条件に、
申告分離課税を選択した配当所得の金額から控除することができる。
という特例です。

上場株式等の売却等の中には、株式投資信託の売却(解約、償還も含む)も含まれていますので、
株式投資信託の収益の分配金と売却損(解約損、償還損含む)の相殺をすることができるということです。
詳細については、このページの下の株式投資信託の売却にかかる税金のほうで説明をしています。


◆上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
株式投資信託の収益の分配金について、申告分離課税を選択した場合に受けることができる特例です。
(正確には上場株式等の売却損に対する特例ですが、関係があるので・・・)

「上場株式等の譲渡損失」について、申告分離課税を選択した配当所得と「上場株式等の譲渡損失との損益通算」を
行ったのにもかかわらず、その損失が残っている場合、
確定申告を条件に、
翌年以降3年間にわたって、その損失を繰り越すことができます。

繰り越された損失は、
(1) その年の非上場株式等の譲渡等の金額
(2) その年の上場株式等の譲渡等の金額
(3) その年の申告分離課税を選択した配当所得の金額
の順番で控除することができます。

詳細については、このページの下の株式投資信託の売却にかかる税金のほうで説明をしています。


◆ 配当控除
株式投資信託の収益の分配金について、総合課税を選択した場合に受けることができる税額控除です。

配当控除については、上場株式等や上場株式等以外という区分で適用判断はしていません。
配当控除は、日本の法人税が課せられている国内に本店をおく法人の株式等や株式投資信託の収益の分配金が対象と
なっているため、例えば、上場株式等に該当している外国法人の株式等にかかる配当や、J-REIT、国外ETF、
国外株式投資信託などは、配当控除の対象外となっています。

また、株式投資信託については外貨建資産や株式の割合によっていくつかに区分され、
そのうち特定外貨建等証券投資信託は配当控除の対象外です。
さらに国内株式投資信託については、株式等の配当とは配当控除の率が異なります。


よって、株式投資信託の収益の分配金について配当控除を受ける場合は計算方法が複雑になるため、
配当控除のページを参照してください。



■ 特定口座の利用
注意:現在は平成21年度における特定口座のことを記載しています。


◆ 特定口座とは
証券会社や銀行などに特定口座を開設した場合、その特定口座を通じて行った取引について、証券会社等が顧客に
代わって計算してくれるものです。
また、源泉徴収口座を選択することにより、顧客に代わって証券会社等が税金(所得税、住民税)を計算して代行納付
もしてくれます。
特定口座で取り扱っているものとしては、現物株式や投資信託、信用取引などがあります。
(証券会社によって細かいところは違うみたいです。)

注意したいこととして、特定口座で取り扱っている商品の売買に対する損益が対象となっていることです。
配当や収益の分配金については、特定口座を受け入れ先として指定できませんので、関係がありません。

※ 平成22年からは、配当や収益の分配金の受取方法のひとつとして、特定口座の源泉徴収口座も可能となります。
特定口座の源泉徴収口座を受け入れ先とした場合、
・上場株式等の売却損と配当や収益の分配金の損益計算を行うことができるようになります。
・実際に口座内で損益通算されるのは年末で、そのときに場合によっては源泉徴収された税金が還付されます。
・他の証券会社の特定口座での上場株式等の譲渡損失との損益通算を行うためには、確定申告が必要です。

◆ 特定口座の種類
特定口座には、以下の2つの口座があります。
毎年、最初に取引を行う時までにどちらの口座にするか選択をすることができます。ただし、年の途中での変更はできません。
また、証券会社等ごとに、特定口座の種類を決定することができます。

簡易申告口座 ・・・・  証券会社が顧客に代わって、特定口座を通じて売却した上場株式等の譲渡所得等の金額を計算します。
その結果が記載された「特定口座年間取引報告書」が送られてきます。
顧客は、それをもとに確定申告を行います。

源泉徴収口座 ・・・・  証券会社等が顧客に代わって、特定口座を通じて売却した上場株式等の譲渡所得等の金額を計算します。
その結果が記載された「特定口座年間取引報告書」が送られてきます。
証券会社等は、投資家への支払いの前に、あらかじめ取引毎に税金分を計算して源泉徴収(または還付)します。
証券会社は、年1回、顧客に代わって税金(所得税、住民税)を納付します。
顧客は、「特定口座年間取引報告書」をもとに確定申告を行うこともできます。
すでに代行納付されているので確定申告をしないこともできます。
取得費の特例や上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を適用したい場合は、
必ず確定申告をしなければなりません。



■ 国内公募株式投資信託の譲渡(売却、解約、償還)にかかる税金


◆ 税法上の取り扱い
国内公募株式投資信託は、上場株式等として扱われます。
また、平成20年12月末までは、換金方法(売却、解約、償還)によって配当所得やみなし譲渡損の計算がありましたが、
平成21年からは、どの換金方法を選択しても、譲渡所得(正確には株式等の譲渡等)として扱われるようになりました。



◆ 課税方式と税率
特定口座の源泉徴収口座でおこなった株式投資信託の売却・解約・償還については、
10%(所得税7%+住民税3%)の源泉徴収がなされ、そこで申告不要を選択することができます。

もちろん、源泉徴収後、申告を選択することもできます。

そのほかの口座での売却・解約・償還については、源泉徴収されないため、確定申告が必要となります。
確定申告では、「株式等の譲渡所得等」という所得区分になります。

「株式等の譲渡所得等」は、申告分離課税が適用されます。
申告分離課税とは、確定申告時に他の所得と分類して計算し、他の所得とは異なる税率を適用することです。

株式投資信託の売却・解約・償還については、上場株式等と同じ取り扱いになることから、
その損益を計算する上で、
「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
の特例を適用することができます。

税率については、上場株式等に該当するかどうかにより、「株式等の譲渡所得等」の中でも適用される税率が異なります。
株式投資信託は上場株式等に分類され、税率は、現在は特例として、10%(所得税7%+住民税3%)となっています。
平成24年からは、20%(所得税15%+住民税5%)に戻る予定です。
ちなみに上場株式等以外の部分については、税率は20%となっています。


◆ 「株式等の譲渡所得等」の金額の計算方法
株式等の譲渡所得等の金額の計算方法は、以下のようになります。

確定申告書では、同じ所得区分でありながら、上場分(上場株式等で金融商品取引業者等へ売委託したもの)と
未公開分(上場分以外)に分けて計算するようになっています。(適用する税率が異なるため)

株式投資信託の売却・解約・償還による損益は、「上場分」として計算します。
また、普通分配金について申告分離課税を選択した場合、C、Dの適用を受けることができます。


◆ 「株式等の譲渡所得等」の金額の計算例


■ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
注意:現在は平成21年度での税制を元に説明しています。


株式投資信託は上場株式等に該当しますので、確定申告を選択した場合、適用を受けることができます。

@ 申告分離課税を選択した配当所得との損益通算が可能
  平成21年1月1日より、上場株式等の譲渡所得等の金額が、損失であった場合、
  確定申告を条件に、
  申告分離課税を選択した配当所得と損益通算をすることができるようになりました。

  これによって、上場株式等(株式投資信託含む)の配当と売却損との間で損益通算ができるようになりました。

A 上場株式等にかかる譲渡損失の繰越控除
  @の適用後、それでも上場株式等の譲渡所得等の金額に損失がある場合、
  確定申告を条件に、
  翌年以降3年間にわたって繰り越し控除を行うことができます。

  特定口座を通じて売却した上場株式等(株式投資信託含む)についても、適用されます。
  繰越控除を適用する期間中は、取引がなくても確定申告をする必要があります。

◆ 前年からの繰越控除がある場合
(1) 最初に、上場株式等の譲渡所得等の金額が損失の場合、申告分離課税を選択した配当所得との損益通算をします。

(2) 前年から繰り越した損失額を損益通算します。

  前年から繰越された損失については、
  未公開分の利益 → 上場分の利益 → 申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得の順番で控除していきます。

  また、繰り越された損失のうち、最初に差し引いていくのは、一番古い年の損失からです。
  (たとえば、平成21年度の所得税計算では、平成18年度の損失 → 平成19年度の損失 → 平成20年度の損失
  の順番で差し引いていきます。)

  それでも前年から繰り越した損失に残りがある場合、2年以内の損失のものは翌年度に繰り越すことができます。
(たとえば、平成21年度の所得税計算では、
 平成19年度の損失と平成20年度の損失は平成22年度へ繰り越すことができますが、平成18年度分は繰り越すことはできません。)




■ 確定申告について


◆ 所得税の確定申告
収益の分配金のうち確定申告を選択したもの、特定口座の源泉徴収口座内で申告不要を選択した売却・解約・償還による損益以外
については、基本的に利益があったときには確定申告は必要になります。

ただし、以下のような例外などに該当する場合、所得税の確定申告は不要となります。
無職の人や主婦、自営業者などは、これには該当しません。 個々の状況に応じて確定申告が必要かどうかで変わってきます。

  @ 給与所得者について、給与・退職以外の所得が20万円以下であった場合
  毎月、給料やボーナスから所得税が源泉徴収され、年末調整を行った給与所得者(派遣社員、契約社員、パート、アルバイトふくむ)
  は、所得税の確定申告をする必要はありません。

  ただし、年末調整を行った給与所得者でも、確定申告をしなければならない条件の一つとして、
  「1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」
  というのがあります。
  つまり、「1つの会社だけから給料をもらっている人で、給料・ボーナス、退職金以外に収入がある場合、
  それを所得として計算した結果、20万円を超えていた時は、年末調整をしていても確定申告しなければならない」
  ということです。
  逆に言えば、20万円以下ならば、確定申告はしなくても良いということです。

  「給与所得及び退職所得以外の所得」としては、
  株や投資信託の売買、信用取引、先物取引、FX、外貨預金などの金融商品から派生する収入だけでなく、
  満期生命保険の一時金やオークションでの売買、懸賞金、土地や建物の売却なども該当します。
  これらを、それぞれ該当する所得の中で所得金額を計算し、その合計額が20万円以下であれば、確定申告は不要となります。

  ということは、特定口座の源泉徴収口座を利用していなくても、税金を支払う必要がなく、実質非課税となります。

  ただし、確定申告不要になるためには、そのほかにも条件があります。
  たとえば、「給与の年間収入金額が2,000万円を超える人」は、上記に該当していても確定申告は必要になります。
  かならず、国税庁のHPなどで確認をしてください。

  参考HP :    国税庁 タックスアンサー (No.1900 サラリーマンで確定申告が必要な人)

  A 特定口座の源泉徴収口座を利用して、税金を納付する場合
  源泉徴収口座を利用することにより、証券会社が税金分を徴収し代行納付しているので、確定申告は必要ありません。
  ただし、@のように、20万以下の利益であっても税金は徴収されますので注意してください。
  確定申告しても戻りません。(もともと納付すべき税金なので)


◆ 住民税の確定申告
住民税については、@のような特例はありません。
利益があれば、確定申告が必要となります。

ただし、特定口座の源泉徴収口座を利用している場合は、所得税とともに住民税も代行納付されていますので
確定申告は不要になります。